【非公開学習用】
ペルソナ

 

ペルソナ(マーケティング)の現在

実践ペルソナマーケティング

環境研究の手法--景気後退期に重要な3キーワード

マーケティングの「目的・手段」と「ペルソナ」

「5つのペルソナ+1」を選択


ペルソナデザインネット

ペルソナデザインとは

ペルソナコンソーシアム

ペルソナスクウェア 

ペルソナ(マーケティング)の現在

ここしばらく、製品開発、マーケティングの分野でペルソナという言葉を耳にする機会が増えている。専門で取り扱ってる訳ではないものの、なんでまたいま改めてという感じを受けている。

流れとして意識したのは、もう結構前になるがWBSでビジネストレンドとして取り上げたレポートが放送されていたのを見た際。大手メディアが取り上げる事象というのは、普及率にして数パーセントに入ったくらいの新規の出来事であることが多い。となると、ペルソナについても同じくらいの普及段階だと想定出来、実際検索してあちこちで取り上げられている事例を眺めていると、それくらいだろうなというのも感覚的に裏付けられる。


改めてペルソナとは何か

念のためペルソナの復習。ご存知の方もいると思うが、実は過去一度ソフトウェア開発系の文脈で日本に紹介されている。そして、記憶がはっきり定かではないが、調査技法やデザイン技法のひとつとして少し違うモデルがもっと前に紹介されていたように思う。要すれば、

ペルソナとは、ざっと説明を引くと、

最近、「ペルソナデザイン」(1)をマーケティングに取り入れる手法の研究を進めている。「30代男性、既婚、世田谷区在住、会社員」という単なるデモグラフィックな属性ではなく、一人の生活や嗜好などを作り上げていく。これを「ペルソナ」と呼ぶ。

例えば、こんな感じである。「世田谷区に住む松田昭司さん(2)は、中堅の運送会社に勤務するドライバーである。自宅では朝日新聞を読み、会社では組合活動を兼任している。高校生と中学生の息子は、2人とも野球をやっていて、夏になると彼らの応援で忙しい。自宅はケーブルテレビに加入していてインターネットも高速で利用できるが、早朝以外はテレビを見ることは少ない。運転中にはラジオを聞くことが多いので、もっぱら情報源は新聞とラジオが中心である・・・。」

こんな感じとなる。そして、この仮想個人をターゲット顧客として商品開発、プロモーション設計etcetcを全て決めてゆく。人によっては、もう一歩二歩進めて物語化までしてしまう人もいたりする。本当に小説を軽く書いてしまうツワモノもいるとかなんとか。

商品設計の分野でペルソナが注目されてきたのはざっとあちこちの事例から読み取る感じ、データの積み上げでまとめたそれっぽい、場合によっては中身がちぐはぐした個性の無い製品よりも、統一感と主張のある製品の方が却ってお客さんに広く受け入れられるというのが体感的に理解されてきたからのようである。

ペルソナは絞ることが広げることに繋がるという、一般感覚的には矛盾した効果を生む。つまり、顧客データの解析からサンプルとして作成したある仮想の特定個人にターゲットを絞ることで、結果深く広めにお客さんに刺さる商品が出来上がるという仕組みになっている。


いまなぜという問い

さて、そこでやはり気になるのはいまなぜ?という問いとなる。冒頭に触れたように、ペルソナという概念やアプローチは前からあった。類似の手法を耳にしたのは自分自身もうだいぶ前なように記憶している。にも関わらずここ半年一年ほどで急に利用している、成果が出たという声を良く聞くようになってきた。

しかも、特定の誰かが音頭を取ってムーブメントにしてきたものかと問われるとどうもそういう感じではない。良く聞く名前、会社名というのは確かにあるが、全体としては同時多発的に見えている(実際はそうでもないのかもしれないが、とりあえず今の見え方として)。

となると、仮説としてはなんらか共通した社会背景なりトレンド感があるのではと読み取りたくなる。日本企業の経営環境、経営スタイルが共通して変わりつつあるというのを何がしか読み取れるのだろうか。

というところ、どうも引っかかって気になるので、ややゆっくりめの自分向け宿題としてメモ。ウェブマーケティングの世界で言われ始めた流れとプロダクトデザインの流れで使われている様子、微妙に発生理由が違うようにも見えており、面白い流れが裏にはあるように感じられている。

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実践ペルソナマーケティング

FatWire社ではペルソナを活用し顧客像を明確化することで、Lead GenerationのROIを高めることを目的に、4つの手段でペルソナマーケティングを実践してきました。 この4つのすべてのプロセスからCMSの新しい活用法までを、実践に基づいた生の情報も交えながら取り上げます。そして、実践的な活用法を踏まえつつ、 日本でも今後ますます重要視されるであろうCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が必要とするマーケティング・インフラとは何か、 企業にとってCMOの果たす役割と展望をまとめて行きます。企業やビジネスを変革し続けているマーケティングに携わるすべての人に、 今後不可欠になるであろう知識と実践法をお伝えします。

第3回:「5つのペルソナ+1」を選択

2009/06/05 09:00

第2回:マーケティングの「目的・手段」と「ペルソナ」

2009/05/22 09:00

第1回:環境研究の手法--景気後退期に重要な3キーワード

2009/05/08 09:00

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第1回:環境研究の手法--景気後退期に重要な3キーワード

 CMSベンダーであるFatWireでは、2007年からペルソナを自社のマーケティングに活用し、従来の広告のあり方、ウェブサイトのあり方を大きく見直した。この連載では2007年より取り組んだ5つのペルソナ開発の経緯、各ペルソナからのクロスチャネルマーケティングの事例、ペルソナからCMSを段階的に「エンゲージメントツール」として展開する方法など、実践プロセスを解説する。

 FatWireは米国FatWire Software(NY,Mineora)の日本法人で、親会社は日本以外にヨーロッパの各国、アジアの各国に拠点を持ち、従業員200名程度の小さなグローバル企業である。開発販売しているものは「CMS」と呼ばれるウェブサイトを管理する製品で、「FatWire Content Server」が中心製品である。周辺のオプションやCMS以外の製品などもあるが、基本的には単一商品のベンダーと位置づけられる。

 「小規模なグローバル企業」「単一の製品」ということで比較にならないかも知れないが、「システム」として考え、「FatWire日本法人は大企業のひとつの課・係・班」と捉えることで、異なる規模、異なる業種でもFatWireで実証実験を行ったペルソナマーケティングが参考になれば幸いである。

 なお、「ペルソナ」とは企業が提供する製品・サービスによって最も重要で象徴的な顧客モデルのことだ(ペルソナコンソーシアムより)。

 FatWireでは、毎年第4四半期になると翌年度の予算を確定することが重要な仕事になる。そして、この仕事は、翌年度の経済状況などの環境を研究する必要がある。「環境研究」とは具体的には未来を予測することだが、その手法は、

  • 単純外挿法:過去から現在までこうだったから来年もこのようになる、という単純な予測方法。
  • 扇形外挿法:台風の進路予測と同様に扇の「ここから(左端)」「ここまで(右端)」の範囲と予測する方法。
  • デルファイ法:専門家や意見のありそうな人5、6人から10人ぐらいに未来予測のアンケートを行い、それをまとめて送付し意見の修正を求める方法で、数回繰り返すことで1点に収斂してくる方法。
  • シナリオ・ライティング法:未来がこうなるだろうとシナリオを書き、そのシナリオと現実の間の矛盾を探る方法。
  • Ask the authority法:未来予測が得意な人や的中率の高い人に聞くという方法。

などまだ他にもあると思うが、これらの手法のうち「単純外挿法」で予測すると2008年の経済は好況ということになる。「シナリオ・ライティング法」でシナリオを「こういう不況になる」と具体的にまとめてみると、その後に集まって来る情報のほとんどは矛盾がなかった。

 私にはどう考えても2008年は経済が好景気であるとは思いにくかったため、景気の後退に合わせた対策、もしくは景気回復時に競争力をつけるための施策が必要と思われた。そこで、FatWireなりに景気後退期の3つのニーズを2008年2月に発売された「WebStrategy」にまとめて掲載した。以下はキーワードごとにその内容を転載したもの。

[グローバルウェブサイト]

『 キーワードを3つ挙げたいと思います。まずは「グローバルウェブサイト」。米国の金融工学からの資本主義の陰りを受け、景気のリセッションが始まり、2~3年は続くでしょう。日本のグローバル企業は米国の経済動向に影響を受けるケースが多いですが、そのリスクを少なくするために、EU、中東、BRICSなどの顧客を少しでも開拓する必要があります。世界経済のリセッションが完了するまでに、自社のWebサイトの多国籍化(多言語化)に取り組んだ企業は、その後に同業他社との差別化が世界各地で可能となります。その手段のひとつとしてグローバルWebサイトがあります。』

[CMSによるワンソースマルチユース]

『 ふたつ目に「CMSによるワンソースマルチユース」。景気のリセッションにより、コスト削減圧力がWebサイトを構築する側に出てきます。単に更新ツールととらえ、自分の仕事が楽になるという発想からのCMS活用では企業のコスト削減圧力に対応できません。CMSにより、Webに掲載するコンテンツを印刷媒体および携帯にもワンソースマルチユースで利用でき、コスト削減が可能です。そのような投資を行うことで、日本でのリセッション完了後に同業他社との差別化が図れる基盤を手に入れることができます。』

[Webサイトのペルソナ利用]

『 最後に「Webサイトのペルソナ利用」。景気のリセッションにより商品開発からマーケティングなどのイノベーションの必要性が高まり、Webサイトも「リード・ジェネレーション/Lead Generation」という目的を明確に打ち出すイノベーションを必要としてきます。』

 [グローバルWebサイト]を構築すると、ひとつの商品のログの分析を多国籍で行なうことが可能となり、同一商品の各国の動向、キャンペーンなどの成果も世界軸で捉えることが経営者のデスクのパソコン上で可能となる。[CMSによるワンソースマルチユース]を構築すると、印刷会社に管理されていた画像なども管理することが可能になるため、将来的に今までの印刷会社でない新規の会社とも取引できることになる。これは印刷サプライチェーンにコスト競争をもたらし、コストが激減する。あるいはRIAと連携し印刷そのものをやめることもできる。

 この連載のテーマでもある[Webサイトのペルソナ利用]を行うことで、ウェブサイトのひとつの目的である「リード・ジェネレーション」の改善を行える。

景気後退期には従来手法でのリード・ジェネレーションより、ROIの高い既存顧客へのクロスセル・アップセルにマーケティングがシフトするが、ペルソナにより絞り込まれたリード・ジェネレーションはROIが高い。

※リード・ジェネレーション(Lead Generation)とはリード(見込み客)を獲得するための活動や行動。

 FatWireユーザーでは、日本で最大級の[グローバルWebサイト]を構築されたクラリオン、[CMSによるワンソースマルチユース]で大幅な改善を行ったリラックス・コミュニケーションズなどの実績はあるが、[Webサイトのペルソナ利用]は日本では実績が少ないためFatWire日本法人が自ら投資を行い実証実験を行っている。このプロセスと結果が「実践 ペルソナマーケティング」の連載である。

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第2回:マーケティングの「目的・手段」と「ペルソナ」

 「マーケティング」の定義は米国マーケティング協会(AMA)によると、「マーケティングとは、組織とそのステークホルダー双方にとって有益となるよう、顧客に向けて価値を創造し、コミュニケーションし、届け、顧客との関係性を構築するための、組織機能とそのプロセスである」

「Marketing is an organizational function and a set of processes for creating, communicating and delivering value to customers and for managing customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders.」

と、2007年に改訂されたようだが、この連載ではマーケティング活動のひとつである「リード・ジェネレーション」を中心に話しを進めて行く。日本では一般的にマーケティング活動は広告代理店に相談しながら進めるケースが多いと思うが、FatWire日本法人では2007年の後半に複数の広告代理店に、

「2008年から不況になるためリード・ジェネレーションの案をいろいろ提案して欲しい。予算はXXXX万円ある。」

と提案を求めた。

 欧米にはリード・ジェネレーション専門のコンサルタント会社などがあり、広告代理店でなく、このような相談はコンサルタントに行うこともある。有名なコンサルタントで「Lead Generation for the Complex Sale」の著者Brian Carrollさんは、自分のブログでリード・ジェネレーションの全体マップ(PDF)をアップしているが、このような全体マップからクライアントのリード・ジェネレーションをコンサルするのであろう。

 リード・ジェネレーションのコンサルタントは少なくとも私の周りにはいないため、提案の精度を高めようと複数の広告代理店に提案を求める際に、この全体マップ(PDF)を説明し提案を求めた。

 各社からの提案は、ランディングページ(LP)、SEO、SEM、メールマーケティング、ブログ、携帯電話などでのリード・ジェネレーションの手段が網羅された詳細な計画書がでてきたのである。しかし、これらの各社の計画書は景気後退期の提案ではなく、景気上昇期にCMSに興味を持つ人のすべてを集める計画であった。

 あたりまえのことだが、景気後退期には従来手法のリード・ジェネレーションでは1件あたりのリード獲得費が増加してしまう。このままこれらの提案を選び、走り出すと、膨大なコストの割りにはリードの数も少なく、質も期待できないのではないかと疑念を抱くようになった。

 最初に全体マップ(PDF)のようなリード・ジェネレーションの手段を見ると手段が大切になり、プロとしてその手段を駆使しようとする傾向になる。よりよき案が出やすい方法で発注するのが発注者の能力なのだが、今回は手段を重要視するように導いてしまっており、FatWireの発注者としてのミスリードと言わざるを得ない。

 そこでリード・ジェネレーションの手段ではなく「まずは顧客ありき」の考え方はないかと情報収集を行う中で「ペルソナ」というキーワードに出会った。私の専門がシステム工学なのだが、このシステム工学に少数モデル法(※注1)という新商品を開発するときに利用する手法がある。

※注1:少数モデル法とは、新商品の開発を行う際に、開発したいものを、3人の住所、名前など特定できる人に説明し、「それなら買う」と言ったならば開発を進めても失敗する可能性が低くなり、開発リスクが低減できるという手法。

 少数モデル法とペルソナ(※注2)は共通点があり親近感を抱いた。ペルソナは、顧客モデルを紙にまとめて定義するが、顧客モデルを策定する際に少数のデプスインタビュー(※注3)を行う。

※注2:ペルソナとは、企業が提供する製品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデルのこと(ペルソナデザインコンソーシアムより)。

※注3:デプスインタビューとは、対象者と1対1の面談形式で、自由なインタビューを行い、深層心理を引き出すインタビューのこと。

 ペルソナと全体マップのリードジェネレーションの手段を組み合わせると、「目的と手段」が目的に合致した手段をきれいに整理し、計画できるのはないかと直感したのである。

ペルソナは最初に「顧客モデル」を作り、次にリード・ジェネレーションが目的の場合はその手段を選ぶ。 景気上昇期は顧客モデルを作る前にリード・ジェネレーションの手段を選ぶため、手段と目的が逆になりやすい。

 景気上昇期は何をやってもうまく行くため事業は発散、膨張しやすいが、景気後退期には事業の選択と集中を行う企業が多い。 スティーブ・ジョブス氏が経営不振に陥ったアップル社CEO再就任2日後の記者会見で、

「アップルはあらゆる人にあらゆるものを提供しようとして失敗し、結果としてこれまで築いてきたブランド資産を失ってしまった。これからはターゲットをコア顧客に絞り込み、彼らの本当のニーズにこたえることに集中する。」

と語っているが、その後の成功は周知の事実である。

 あらゆる企業が景気後退期の危機に直面した今、組織単位の事業の選択と集中は重要になるが、スティーブ・ジョブズ氏のいう 「ターゲットをコア顧客に絞り込み」 ということは、顧客の選択と集中を行うことで、事業の選択と集中を行うこととニュアンスが違う。

 ペルソナは顧客モデルを選択するために抵抗感を伴うが、景気後退期に生き残り、底をうち景気上昇期に他社より発展するためには有効な手段ではないだろうか。

景気後退期に企業はコスト削減の側面から事業の選択と集中を行うが、ペルソナは顧客の選択と集中を行うことにつながりやすい。

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第3回:「5つのペルソナ+1」を選択

 FatWire株式会社で自社のペルソナを開発するにために、まずはCMS構築事例として発表されているものをグルーピングし、自社CMSユーザーと比較してみた。他社製品の発表された事例を整理すると、以下の5つぐらいのパターンになる。

  1. 部分サイトへの適応事例
  2. コーポレートウェブ事例(単純)
  3. コーポレートウェブ事例(複雑)
  4. イントラ事例
  5. 自治体事例

 (1)はオープンソース、Movable TypeWebReleaseの事例が多数。(2)はNORENHeartCoreの事例がある。(1)のMovable TypeやWebReleaseも(2)の事例があるため、CMS製品の価格は5万円代から400万円代までバラツキがあるが、CMSがコモディティー化する中で、(1)(2)の分野では商品や実装価格さえも低価格競争が起きている。

 (5)の自治体のCMS事例はALAYADBPSなど日本製のCMS事例が多いが、企業で利用するCMSと自治体で利用するCMSにはそれほどの機能差がないため、コンテンツ作成者が多数で多くの部門が参加するような複雑なものでない場合、(5)は(1)(2)と同様にコモディティー化する可能性もある。

 (3)はInterwovenFatWireのCMS事例が多い。(4)はBtoEであるため事例があまりオープンにされていないが、NORENがセミナーで事例発表を行うことがたまにある。

 (1)~(5)の発表された事例に共通な点は、いずれも「広報部門」が主管でCMSを導入することである。広報部門は、企業のステークホルダーと呼ばれるすべての人に正確な情報を伝える必要があるため、CMSのニーズが強い。

ここでFatWireはペルソナ(※)をどう考えるべきだろう。

※ペルソナとは、企業が提供する製品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデルのこと(ペルソナデザインコンソーシアムより)。

 (1)から(5)のすべてをペルソナにすべきだろうか。FatWireが得意とし、顧客満足を与えれるユーザーをペルソナにすべきだろうか。企業の大小、企業の種類(営利、公共)、企業の業種を考慮すべきだろうか。

 発表されたCMS事例を、業績評価システムのバランススコアカードの4つの視点、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」で考察すると、(1)~(5)はサイトの更新作業が楽になるという点で「業務プロセスの視点」への影響は大きい。サイトの更新が楽になれば更新頻度も上がり、サイトへのアクセス数も増加する。

 (3)の事例には製品情報データベース(PIM:Product Information Management)が構築され、FAQなどが充実することで顧客エクスペリエンスが高まるという「顧客の視点」への影響が大きいものもある。また、ホールディングカンパニーにサーバーを集約することでコスト削減を行い「財務の視点」への影響が大きいものも含まれている事例が多い。

 (3)以外のCMS事例は、

サイトの更新を正確に楽に行いたい→更新頻度のアップ→アクセス数アップ

というニーズから導入されたCMSが多い。逆にそれ以外の利用事例は日本では現段階では少ない。

FatWireのCMSにはいくつかの特徴がある。

特徴1:ウェブサイトにアクセスした人毎にコンテンツを表示する(パーソナライズ、動的配信)

特徴2:コンテンツデータベースとして製品情報データペース(PIM)を構築できる(フレックスアセット)

特徴3:インストールサーバーのCPU数で価格が決まる(静的配信から動的配信へ拡張)

 これらの特徴はウェブサイトを「業務プロセスの視点」から見た場合は、(1)(2)にはオーバースペックで、逆に5万円ぐらいのCMSで実装すれば済んでしまうこともある。

 (3)には特徴3が不可欠である。ホールディングカンパニーにCMSを導入し、支配下の会社のサイトを集中管理する場合に、編集者の数や、サイトの数で課金されては導入が不可能だ。

 (4)は現在中途半端な事例しかなく、ID管理と連動された本格的なCMS事例がまだオープンにされていないためここでは省く。

 (5)の大規模なものになると特徴3は不可欠である。

 逆にウェブサイトに「顧客の視点」を求めた場合は、(1)(2)(3)では特徴1、2、3は不可欠になる。ウェブサイトは顧客エクスペリエンスを高めることが目的なのが本来の姿で、欧米ではそういう事例が多い。

・日本のCMS導入事例:サイトの更新を正確に楽に行いたい(業務プロセスの視点)
・欧米のCMS導入事例:顧客エクスペリエンスを高めたい(顧客の視点)

 (1)~(5)は広報部門に「業務プロセスの視点」から導入されることが多いため「広報CMS」と呼ぶことにする。これまでの考察で広報CMSにおけるFatWireのペルソナは(3)に絞り込まれた(業種を意識しなければ(5)の大規模なものと同じ)。他社CMSを含めて発表済みの事例から、

FatWire CMSの広報CMSにおけるペルソナは複雑なコーポレートウェブを必要とするユーザー

となった。

 FatWireならではのCMS導入ユーザーから、他のペルソナも選択した。

●選択された5つのペルソナ
ペルソナ1:複雑なコーポレートウェブを必要とするユーザー
ペルソナ2:紙媒体・携帯・デジタルサイネージなどへワンソースマルチユースしたユーザー
ペルソナ3:世界数十カ国に多言語サイトを構築したユーザー
ペルソナ4:ECサイトなどの会員管理とCMSを連動したユーザー
ペルソナ5:ERPなどの基幹とフロントのCMSを連動したユーザー

 そして、もうひとつペルソナ開発を検討中なので「5つのペルソナ+1」がこれで選択できた。連載『第1回:環境研究の手法--景気後退期に重要な3キーワード』でも解説を行ったが、FatWireは基本的にひとつのCMSを販売する会社で、そのひとつの製品に対して「5つのペルソナ+1」を選択したのである。

 次のステップとしてペルソナをどうやって開発するかであるが、連載『第2回:マーケティングの「目的・手段」と「ペルソナ」』にある「少数モデル法(※)」にあるように、ペルソナ開発もバーチャルで行ってはいけない。デプスインタビュー(※)で顔を見て得た情報から開発するものである。

※少数モデル法とは、新商品の開発を行う際に、開発したいものを、3人の住所、名前など特定できる人に説明し、「それなら買う」と言ったならば開発を進めても失敗する可能性が低くなる。

※デプスインタビューとは、対象者と1対1の面談形式で、自由なインタビュー形式で行い、深層心理を引き出すインタビュー。

明暗を分けるペルソナ開発の本質

 図1の2つは、ペルソナ開発をインターネットのFAQサイトなどを利用し、質疑応答から開発する会社があるが、これはペルソナの本質を逸脱している。左のアバターにインタビューを繰り返しても、悲しくても笑顔の顔マーク、うれしくても涙マークと「顔文字」では深層心理は判断できない。

 図1の右の女性の顔の表情は「悲しい?」「普通?」「楽しい?」と、デプスインタビューにより顔の表情を読むことで次のインタビューも想定でき、これを繰り返すうちに、顔の表情、身体の動き、声のトーンなどからマスクドニード(Hidden needs、※)が把握できる。これがペルソナ開発で最も必要なことであり、ペルソナの本質である。

※マスクドニード(Hidden needs)とは、その人自身が気づいていない、マスクを被った、隠されたニード。

 ペルソナの開発はKJ法などに馴れているなら、自社で開発方法を習得するのもひとつの方法である。FatWireはペルソナデザインコンソーシアムのメンバーから選択し外注した。ペルソナ開発会社の選択のポイントは実績はもちろんだが、開発されたペルソナの質も重要である。これはCMS構築会社の選択にも通じることだが、広報CMSの構築実績が多くあっても、FatWireが選択したペルソナ2、3、4、5のCMS実装とはプロジェクトの質が違うため、逆に広報CMSの実績は足かせになる場合もある。これも連載中に「イノベーション・ジレンマ」としてまとめる予定である。

 連載第4回は開発されたペルソナをリード・ジェネレーションに利用した2つの事例(ケースA、B)をまとめる。

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FatWire SoftwareのWebエクスペリエンスマネジメント(WEM)ソリューションは、企業ユーザーに豊かなオンライン体験を提供し、Webで企業のプレゼンスを上げるシンプルなマネジメントを提供しています。

FatWire SoftwareはNY Mineoraに本社があり、世界10カ所の事業所、500社を超える顧客を有しています。

FatWire Softwareの日本法人は2004年に設立され、CMS製品としての日本のユーザーのニーズを本社へ、世界のユーザーのニーズを日本のユーザーに届け、迅速なテクニカルサポートを行うとともに、日本のニーズに適したプロフェッショナルサービスを提供することにも定評があります。

ペルソナを利用した「ペルソナドアページ」の実装はFatWire独自のもので、このペルソナドアページの機能はFatWireのプロフェッショナルサービスとして提供します。

お問い合わせはこちらまで。

※FatWireプロフェッショナルサービスとは

FatWire CMSを熟知したFatWireの技術者によるCMS実装のコンサルタント、基本設計、開発実装。

ペルソナドアページ

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