User Experience とは?

 

1. ユーザー・エクスペリエンス(user experience / ユーザー体験 ) (www.atmarkit.co.jp)

2. エクスペリエンス・システム ~顧客満足度を左右するエクスペリエンス~ (www.atmarkit.co.jp)

3. 時代のキーワード:“エクスペリエンス”とは何か(www.atmarkit.co.jp)

4. ユーザビリティ usability / useability / 使いやすさ / 使い勝手 (www.atmarkit.co.jp)

5. アクセシビリティ accessibility / 接近可能性 / 可触性 / 近接性 (www.atmarkit.co.jp)

6. Microsoft Windows ユーザー エクスペリエンス FAQ 

1. ユーザー・エクスペリエンス(user experience / ユーザー体験 )

    ( http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/userexperience.html )


 製品やサービスの使用・消費・所有などを通じて、人間が認知する(有意義な)体験のこと。製品やサービスを利用する過程(の品質)を重視し、ユーザーが真にやりたいこと(本人が意識していない場合もある)を「楽しく」「面白く」「心地よく」行える点を、機能や結果、あるいは使いやすさとは別の“提供価値”として考えるコンセプト。
 認知心理学者で、かつて米国アップルコンピュータでユーザーエクスペリエンス・アーキテクトの肩書きを持っていたドン・ノーマン博士(Dr. Donald Arthur Norman)が、「ヒューマン・インターフェイス」や「ユーザビリティ」よりも、さらに幅広い概念を示すために造語したものが由来とされる。
 同博士が共同設立者でもあるコンサルティング会社のニールセン・ノーマン・グループでは、「エンドユーザーと、会社およびそのサービス、製品との相互作用のあらゆる面を含んでいる。典型的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、つまらぬいらいらや面倒なしに、顧客のニーズを正確に満たすことであり、次に所有する喜び、使用する喜びとなる製品を生産するといった簡単、簡潔なことである」と定義している。
 ITの分野では、コンピュータの使い勝手にまつわる話で登場するほか、Webサイトを使うこと自体に、「楽しい」「うれしい」という経験ができるようにデザインすることで、そのサイトへのリピート率が上がり、ビジネス上有利になるといった文脈で語られることが多い。
 またマーケティングの分野では、ユーザー・エクスペリエンス自体に経済的価値があるとして、B・ジョセフ・パイン2世(B. Joseph Pine II)やジェームズ・H・ギルモア(James H. Gilmore)、バーンド・H・シュミット(Bernd H. Schmitt)などが「経験価値」という概念を提唱している。

参考文献

「経験経済――エクスペリエンス・エコノミー」B・J・パイン、J・H・ギルモア=著/電通「経験経済」研究会=訳/流通科学大学出版/2000年 
「経験価値マーケティング――消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力」バーンド・H・シュミット=著/嶋村和恵、広瀬盛一=訳/ダイヤモンド社/2000年 
「経験価値マネジメント――マーケティングは、製品からエクスペリエンスへ」バーンド・H・シュミット=著/嶋村和恵、広瀬盛一=訳/ダイヤモンド社/2004年 

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2. エクスペリエンス・システム ~顧客満足度を左右するエクスペリエンス~ (http://www.atmarkit.co.jp/fitbiz/crm/crm05/crm01.html )


eCRM実現のためのメソドロジー入門.第5章 エクスペリエンス・システム.~顧客満足度を左右するエクスペリエンス~

2.1 優れたエクスペリエンス(経験)が顧客を満足させる 

 今回は、“エクスペリエンス・システム”の解説です。この耳慣れない言葉である“エクスペリエンス・システム”とは何でしょうか。 

 まずは前回までの内容を振り返ってみましょう。第3章の“マーケティング・システム”は、「非顧客(ノン・ユーザー)」を「見込み客」、すなわち、製品やサービスを購入する可能性のある人々に変換する仕組み・方法でした。次の第4章“セールス・システム”では、その「見込み客」が「購入客」に変換される仕組み・方法を説明しました。 
 一般的なマーケティングやコミュニケーション理論の教科書では、たいていここまでの議論で終わっています。つまり、「どうやって自社製品を売るか」までなのです。これこそが「製品中心主義的な発想」であり、とても顧客中心主義とはいえず、「とにかく売ってしまえば勝ち、後は知らない」という印象を受けます。
 しかし、上記のような売り逃げ的な発想だけでは、eCRMの基本的なコンセプトである、顧客との長期にわたる関係づくりには不十分です。そこで、「エクスペリエンス・システム」の設計が必要になるのです。 

(1)エクスペリエンス・システムが提供するものとは 

 エクスペリエンス・システムの機能は、「購入客」を「満足客」に変換する仕組み・方法です。具体的には、購入客に対し、実際に製品を利用してもらう際に、優れたエクスペリエンス(経験)を提供することがエクスペリエンス・システムの役割です。その結果として、満足した顧客、すなわち「満足客」が生み出されるということなのです。
 まず、エクスペリエンス・システムのホッパー図でこの仕組みをご確認ください(図1)。なお、ホッパー図の右側にある、「ステージング施策」「IT施策」については後ほどご説明します。

図1 エクスペリエンス・システムのホッパー図 

 ところで、「製品の利用を通じて……」ということだと、それはマーケティング(狭義の)やコミュニケーションの領域の問題ではなく、「製品開発」の問題ではないの? と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。確かにそのとおりです。だからこそ、これまで、マーケティングの教科書ではあまり触れられることがなかったのです。
 顧客が製品・サービスに求めるものはどんどん高度化しています。以前は「所有」するだけで満足していた時代がありました。その次の段階では、その製品が提供する機能を重視しました。あるいはその機能を利用することで得られる便益、つまりベネフィットが製品の良しあしを決める重要な尺度になりました。
 ところが、現在は製品自体が提供できる機能や便益だけでなく、その製品が持つイメージや開発企業のイメージ、付帯するサービスなどを含めた「トータルな利用経験」が、顧客満足度の高さを左右します。
 というのも、基本的に不足しているものなどないという満たされた現代社会を背景に、企業が製品の機能・便益レベルではほとんど差別化できないという競合状況に陥っているからです。従って、トータルな利用経験の優劣が成功のカギとなっているのです。そうなると、もはや企業の研究・開発セクションだけで対応できる問題ではなくなってしまうのです。

「商品の差別化が難しくなってきた現在では、顧客満足度を左右するのは、商品そのものだけでなく、商品を利用する際の経験の優劣が重要なポイントになっている」

(2)「経験価値」という概念

 このトータルな利用経験のことを「経験価値」と呼びます。これは、『経験経済』(流通科学大学出版、原題:Experience Economy)の著者である、B・J・パイン氏、J・H・ギルモア氏や、『経験価値マーケティング』(ダイヤモンド社、原題:Experiential Marketing)の著者、バーンド・H・シュミット氏などが中心となって提唱している概念です。
 ここで、経験価値とは具体的にどのようなものなのかを「コーヒー」の例を用いて説明してみましょう。インスタントコーヒーやコーヒー豆をスーパーやコンビニで買ってきて、自宅で飲まれる方は多いと思います。この場合、コーヒー1杯はおおむね20~30円程度でしょう。これが自宅でコーヒーを飲んだ場合の、コーヒー1杯が持つ“経験価値”の値段となります。
 では、外出中に、ちょっとした時間で気軽にコーヒーを飲みたくなったとき、どんなお店を選択しますか? おそらく、ドトールのような立ち飲み感覚の喫茶店でしょう。この場合、“経験価値”への対価として180円前後が支払われます。
 もっと洗練された雰囲気の中でコーヒーを楽しみたいときは、スターバックスのようなお店に行くのではないでしょうか。この場合は対価が300円前後となるでしょう。あるいは、仕事上の打ち合わせや、ゆっくり本でも読みながら時間をつぶすのが目的なら、従来の形式の喫茶店に入るのではないでしょうか。そうすると、対価はコーヒー1杯当たり500円程度となりますね。
 このように、私たちは、そのときの気分や目的に応じて、同じコーヒー1杯を飲むのでもいろんなお店を使い分けているわけですが、この使い分けの基準となっているのが、コーヒーそのものの味だけでなく、各店が持つブランド・イメージや店内の雰囲気、サービス内容などを総合的に勘案したトータルな経験なのです。それぞれのお店での経験に対して価値の違いを認めるからこそ、自宅で飲めば1杯数十円程度のコーヒーに対して、その数倍のお金を喜んで支払うわけですね。
「商品そのものの価値以外に、商品のブランド・イメージやそれが提供される際のサービス内容などのトータルな経験によっても、顧客が感じる価値は異なってくる。そうした経験による価値を「経験価値」として捉えるとよい」

では、実際にこうした高い経験価値を提供し、満足客を生み出すためのエクスペリエンス・システムはどのように設計すればよいのでしょうか? 

2.2 「パーソナライゼーション」と「カスタマイゼーション」 

 高い経験価値を提供し、満足客を生み出すための製品はどうやって作り出されるのでしょうか。すなわち、そうした製品を作り出すのがエクスペリエンス・システムというわけです。ここではこのエクスペリエンス・システムをどのように設計すべきかということについて説明します。

(1)「パーソナライゼーション」と「カスタマイゼーション」 

 エクスペリエンス・システム設計のキーワードは、「パーソナライゼーション」と「カスタマイゼーション」です。パーソナライゼーションとは、顧客を個人として識別・特定することです。これまでのように「顧客全体」という十把ひとからげでも、「20代男性」といったレベルでもダメです。「鈴木一郎さん」といった個人レベルで顧客を把握しなければなりません。
 そのうえで顧客1人1人の異なるニーズに対応して製品やサービスをアレンジすることが必要です。これがカスタマイゼーションです。製品やサービスは、顧客個人を識別して、カスタマイズすることによって高い経験価値を持つのです。 
 実際のシステム設計は、この2つのキーワード、パーソナライゼーション、カスタマイゼーションを基本思想におき、「ステージング施策」に落とし込んでいくことになります。
 ステージング施策とは『経験経済』で明らかにされている方法論であり、「経験」という価値を「観客」である顧客に提供する行為です。ステージング(上演する)という言葉で表されているように、「演劇的モデル」によって顧客に価値を提供することです。 

「優れたエクスペリエンスを提供するためには、まず顧客を個人として捉えなければならない(パーソナライゼーション)。そして、1人1人の異なるニーズに対応した製品やサービスを提供することだ(カスタマイゼーション) 」

(2)「演劇的モデル」にのっとった製品の経験価値化 

 この演劇的モデルとは、製品やサービスはパフォーマンスである、という考え方をするということです(図2)。
『経験経済』では次のように演劇とビジネスとを対比しています。 
  ・ドラマ=戦略:Strategy 
  ・台本=過程:Process 
  ・劇=仕事:Work 
  ・パフォーマンス=提供物:Offering 
 そして、経験を演出する「キャスト(配役)」として、従業員が重要な役割を果たすことになります。ステージング施策の具体的な展開については、ここでは詳しくは触れませんが、ぜひ『経験経済』をお読みいただければと思います。 

図2 『経験経済』による演劇的モデル 

 これまでの議論をまとめると、エクスペリエンス・システム設計とは、このような演劇的モデルにのっとり、製品の経験価値化を図るための統合された仕組みづくりである、ということになります。 

(3)エクスペリエンス・システムを支援するIT施策 

 最後にエクスペリエンス・システムを支援するIT施策についてお話ししましょう。eCRMという視点から対象をインターネットに絞って考えると、いわゆる「レコメンデーション・エンジン」に該当するソフトウェアが中心的な役割を果たします。
 レコメンデーション・エンジンによって、個々のサイト訪問者を特定し(パーソナライゼーション)、顧客の性別・年齢・職業といった基本特性、過去の購買履歴やサイト上の行動履歴に基づき、最適な情報や製品を取捨選択して表示する(カスタマイゼーション)が可能になるからです。
 この分野で代表的なソフトは「ブロードビジョン」ですね。もちろん、ほかの多くのCRMソフトウェアもパーソナライゼーションやカスタマイゼーションの機能を持つモジュールを開発していますので、導入にあたっては各社製品の比較検討が必要となります。.
「「レコメンデーション・エンジン」を導入することで、パーソナライゼーションやカスタマイゼーションが可能になる。多くのCRMソフトウェア製品がそうした機能を搭載している」

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3. 時代のキーワード:“エクスペリエンス”とは何か
     (http://www.atmarkit.co.jp/fitbiz/serial/xp/01/01.html )

eビジネスが生み出すエクスペリエンス
第1回 時代のキーワード:.“エクスペリエンス”とは何か

(1)エクスペリエンスというキーワード 

 ITの世界でおそらく、いま最も注目を集めている言葉はエクスペリエンスであろう。少なくとも、米国のeビジネス関係者にとっては、一番重要な戦略目標であるのは間違いない。マイクロソフトが新しいOSやOfficeのキーワードとして「エクスペリエンス」を採用したことで日本でもこの言葉の認知率は高まったが、その意味するところについてはまだまだ浸透しているとはいえない。. さて、エクスペリエンスとは「体験」と訳す向きもあるが、この訳はあまり適切ではない。一言でいえば「これまでになかった体験」と表した方がピンとくる概念である。具体例を挙げよう。. 1980年代に急速に世の中に広まったソニーの「ウォークマン」は、現在流に表せば「エクスペリエンス」だった。ウォークマンの出現以前は音楽といえば「建物の中で耳にするもの」であり、「自由に外に持ち出すことはできないもの」であった。ソニーの故・盛田会長の著書『Made in Japan』中のエピソードに、かつて盛田氏が滞在したニューヨークで、若者が路上で大きなラジカセを肩に担ぎながら音楽をストリートで楽しんでいる光景を目にして、「音楽を外に持ち出す」ことの市場性を確信したというくだりがある。盛田氏のその確信どおり、ウォークマンは世界的な大ヒット商品となり、世界中の人々のライフスタイルを大きく変えることになった。 

<写真>ソニーの初代ウォークマン「TPS-L2」。その登場は、
「音楽を屋外に持ち出す」という新しい体験をユーザーにもたらした 

 エクスペリエンスの定義をもう少し明確にしてみよう。「これまでになかった体験」に加えてもう1つ重要な要素がある。それは「これまで妥協してきたものを打ち破るもの」という定義である。先のウォークマンの例でいえば、「通勤電車の中や買い物で街を歩いているときには、好きな音楽は聴けない。なぜならラジカセは重たいし、持ち出してもイヤホンは音質が良くない」といった「音楽を屋外に持ち出せない理由」が存在していた。われわれはウォークマン以前はこれらの理由を当然のこととして受け入れ、「屋外では自由に音楽を聴かなくてもいい」と妥協してきたのである。. 同じくソニーの製品で別の例を挙げみよう。家庭用VTRの登場は、「連続ドラマを見るためには放送時間までに家に帰らなければならない」という妥協を打ち破ってくれた。パスポートサイズの8ミリビデオの出現は、「自分の子供の成長を簡単に記録するのは静止画、つまり写真以外にはない」という当時の妥協を打ち破ってくれた。.. このようにウォークマンも家庭用VTRも8ミリビデオもすべて「エクスペリエンス」をわれわれに提供してくれた製品である。.
 ではいま、なぜ急速にこのエクスペリエンスが注目を集めているのか。そこにITの登場がある。平たくいえば、IT技術を用いることで「妥協してきたものを打ち破るこれまでなかった体験」を提供できる可能性が飛躍的に増えたからである。その具体例が、例えばインターネットを用いた新しいエクスペリエンスである。. eメール以前は、他人と連絡を取り合うのには、家あるいは職場に電話をかけるか(どちらにいるか把握しなければならないし、相手が忙しくない時間を見計らってかけなければならなかった)、場合によっては手紙を書くか、いまにして思えば不便な世界だった。. アマゾン・ドット・コムやeショッピングブックスの登場以前は、本が欲しいなら必ず書店に出向かなければならなかったし、10冊も本を買い込んだ日にはひいひいいいながら自宅まで持ち運ぶ必要があった。インターネットが当初爆発的に人々の関心を集めたのは、この新しいエクスペリエンスの可能性が彼らの興味を強く刺激したからである。.

(2)新しいエクスペリエンスを渇望する世界 

 このように説明すると、インターネットをベースにしたビジネスモデルはすべて「エクスペリエンス」であるかのように受け取られるかもしれない。しかし、答えはおそらくそうではない。
 1つは、インターネットの黎明期には目新しかった体験も、いまでは慣れてしまったため、必ずしもそうではなくなってしまったものが多いということ。もう1つの、もっと重要な理由は、「妥協を打ち破る」はずの“ビジネスモデル”とやらが、それが標榜するほど使いやすくない──むしろ「パソコンもインターネットも使いにくいものなんだけれどそれは仕方がない」という新たな妥協をユーザーに強いてしまっている現実がある。
 とりわけ日本においては、エクスペリエンスの設計というのはそれほど重要視されていない。
 例えば、パソコンを購入したときに付いてくる膨大なマニュアル。マニュアルは通常多数の分冊からなる。特にパソコン初心者は「まず最初にお読みください」(10ページ程度で梱包を解いてマシンやケーブル類の接続方法やスイッチの入れ方などについて述べたもの)から始まり「パソコン本体のマニュアル」(おそらくこの100ページぐらいのマニュアルに一応目を通さないと基本構造は分からない)の2つを精読したうえで、「できる×××」のようなマニュアル本と呼ばれる市販の書籍(添付のWindowsマニュアルは難しいので多くのパソコン初心者はこうした書籍を購入するか、パソコンスクールに通う)と「付属のソフトウェアについて」といったマニュアル(例えばワープロソフトやデジカメのプリント用ソフトなどで、付属ソフトが多ければマニュアルも多くなる。こちらも市販本が必要な場合もある)に目を通さないとパソコンの世界に入ることができない。とてもエクスペリエンスが設計されている状況とはいいづらいのがパソコンの世界といえる。
 これはパソコンを前にして、われわれが当たり前のように妥協してしまっているのである。そして、これはいつかは打ち破られるべき妥協なのだ。現に家庭用コンピュータともいえるプレイステーションは、ユーザーにこの対極ともいえるエクスペリエンスを提供している。. プレイステーションは購入してくると、たぶん家庭用VTRやラジカセと同じくらい簡単に設置できる。小学生のうちの娘でもできるだろう。しかもその上で走るソフトウェア(つまりゲームソフト)はすべて「直感的に操作できる」ものばかりである。おそらく家庭用ゲーム機のソフトで、パソコン学校に通ってインストラクターに使い方を教授してもらわなければ遊べないものは、1本も発売されていない。. パソコンについては、コンピュータ会社にお願いするとして、インターネットビジネスを行っているWebサイトを覗いてみても、エクスペリエンスについてはお寒い状態だ。.
 まず圧倒的多数は「迷路のように目的地にたどり着けないサイト」になってしまっている。インターネットユーザーは、新製品の情報が欲しいとか、預金口座を開きたいとか、電車の時刻表を調べたいとか、何らかの目的を持ってサイトにやって来るものだ。ところが、多くのサイトがエクスペリエンスの設計を重視していないがために、「情報は存在するが、情報までの道筋が分からない」サイトが続出してしまっている。この状況は「1ページ、1ページを表示するのに時間がかかる」という日本の通信事情と相まって「もうやってられないから別のサイトを探してみよう」あるいは「インターネットで探すのはやめよう」という結果を生み出している。. 
 本来、生活が便利な方向に変わるのではないかという期待感をベースに増加してきたインターネットユーザーが、真のエクスペリエンスを心から渇望する状況が生まれているのである。.

(3)エクスペリエンスの時代への突入 

 実は成功しているeビジネス、つまり世の中から支持され、収益化への道筋が見えているeビジネスと、失敗するeビジネスの違いはエクスペリエンスの設計にあるといわれている。具体例をご覧いただこう。. 海外への出張が多く、レンタカーを使う方はハーツ社のハーツ#1クラブゴールドという会員制のサービスをご存じの方も多いだろう。例えば私がサンフランシスコ出張に出掛けたとしよう。車の予約は普通のユーザーも#1クラブゴールド会員も、さしてエクスペリエンスとしては変わらないかもしれない。違いは空港に到着してからである。. もし私が普通のユーザーだとすると、12時間のフライトを終えて荷物をピックアップしてHertz社のピックアップバスに乗り込んでから(通常、すでに到着後1時間ぐらい経過している)、さらにうんざりすることになる。それはレンタカー会社のカウンターの行列だ。おそらく先約が20名ほど列を成している。4~5カ所のカウンターが開いているが、それでも自分の番がくるまでに待つだけでうんざりしてしまうような時間がかかる。ようやく自分の番がくると、なぜ列の進み方が遅いのかが分かる。まずは予約した乗用車のグレードの確認、免許証の確認、クレジットカードの提示から始まり、損害賠償保険の範囲を決めたり、返却時のガソリンをどうするかについてのオプションの決定など、カウンターで15分以上もいろいろな手続きを行うことになる。最後に一通り書類に目を通してサインをすることで、ようやく自分が運転できる乗用車に対面できるというわけである。
 もし私がハーツ#1クラブゴールド会員だったら、話はまったく違う。空港で荷物をピックアップして、Hertz社のバスに乗り込むと「ハーツ#1クラブゴールド会員の方は先にここで降りてください」という社内アナウンスがある。車を降りてみると「Welcome Mr. Takahiro Suzuki(鈴木貴博様ようこそ)」という電光掲示板のメッセージとともに、私が乗るべき乗用車がかぎ付きで駐車場に置いてある。普通会員が行うべき各種の確認手続きは、すべて「いつものやつで」ということで済んでいるのである。
  このハーツ#1クラブゴールドという仕組みは、全米の多忙なビジネスマンにまったく新しいエクスペリエンスを提供した。考えてみれば極めてIT的かつインターネット的なエクスペリエンスだ。私のいつもの情報をハーツ社のほうで持っていてくれる、つまりITのデータベースが存在し、しかもそれをITのセキュリティが守ってくれるとともに、私の出張先のハーツの営業所にネットワークでその情報が送られているからこそ成立するという意味においては IT抜きにはこのエクスペリエンスは提供できない。. 
 一方で、なぜほかのレンタカー会社が同様なサービスを展開できないのであろうか。実は、このハーツ型のエクスペリエンスを提供するに当たっては、営業所の業務フローの再設計、基幹系の予約システムの改変、顧客とのインターフェイスの再設計、マーケティングプログラムの見直しなどレンタカー会社が行うべき仕事をすべて横断してユーザーエクスペリエンスデザインをやり直さなければならない。ハーツ社はこの野心的なビジネスプロセスの再設計をわずか2年間で成し遂げた。他社はハーツの新しいエクスペリエンス出現後数年たっても、まだ新しいビジネスプロセスの設計に成功していない。このレベルのエクスペリエンスの設計には、高度なITの知識と、深い顧客プロセスに対する洞察が必要なのである。
. ハーツの例は、いま多くのサービス産業が直面している課題を内包している。単にインターネットをちょっと活用して新しいサービスを始めるという世界と、本格的な業務プロセスを再設計して、新たなシステム投資を行って新しいエクスペリエンスを提供する世界では明らかにかかわるべき人々の数、部署の数、打破すべき課題の量が異なるのである。そしていま、世の中で渇望されている新たなエクスペリエンスは、後者のアプローチが不可欠なレベルに突入しているのである。
. これからのシリーズでは、さらに具体的に掘り下げて、エクスペリエンスがどのようにビジネスを変えていくのかという点や、どうすれば顧客から大きな支持を得るエクスペリエンスが設計できるのかという点について論じていきたい。 
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4. ユーザビリティ usability / useability / 使いやすさ / 使い勝手 (http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/usability.html)


 コンピュータを含むさまざま機器、ソフトウェアやWebサイトなどをユーザーがその使用方法などを理解して、快適かつ効率的に使えること。一般的に「使いやすさ」「使い勝手」を意味するが、有用性、利用性、利便性、可用性、使用可能なことといった訳語が与えられることもある。
 もともとは英語の「usable/useable:使用可能な」の名詞形で、「useful:役立つ」とは異なり、「使い方が分かりづらい」「操作が面倒」といった不便さがない(少ない)という面を表す言葉。どのくらい容易に目的を達成できるか、その製品が持つ機能・性能を十分に引き出すことができるかといったユーザーにとっての有効性、効率性、満足度を示すもので、操作性(取り扱いやすさや誤操作の防止)、認知性(直感的な分かりやすさ)、快適性(心地よさ)、安全性(危険や致命的間違いの防止)などが含まれる。
 国際規格ISO 9241(VDTを用いたオフィス作業の人間工学的要求事項)による定義では、「ある製品が、指定されたユーザーによって、指定された利用状況において、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ(effectiveness)、効率(efficiency)、およびユーザーの満足度(satisfaction)の度合い」とされている。ユーザビリティの国際規格であるISO 13407(インタラクティブシステムのための人間中心設計プロセス)の定義もこれに準拠する。

 コンピュータ分野では、HCIやヒューマンインターフェイスに関連して使われていた用語で、1980年代から1990年代までは、使いにくさ解消の活動として位置付けられていたが、1990年代後半あたりからISO 9241/13407の定義のような、より積極的な意味合いが与えられるようになってきている。
 コンピュータ機器やソフトウェア、Webページなどを実際にユーザーに使用してもらい、操作の迷いやミスを実測したり、ヒアリング、アンケートしたりするなどして定量的な調査を行う活動を「ユーザビリティテスト」という。企業情報ポータル(EIP)の構築に当たって、業務効率を上げる画面設計のためにこうしたテストを行う場合も多い。
 前述のISO 13407の周辺文書 ISO/TR 16982では、12種類のユーザビリティ評価手法が紹介されている。
■ユーザーテスティング
■インスペクション
ユーザー観察
ドキュメントベース・メソッド
パフォーマンス評価
モデルベース・メソッド
クリティカルインシデント法
専門家評価
質問紙法
自動評価
インタビュー

 

シンクアラウド法


協同的設計・評価


クリエイティビティ・メソッド

ISO/TR 16982で取り上げられているユーザビリティ評価手法

 なお障害者福祉の分野でも、1980年代後半からアクセシビリティ(accessibility:接近可能性)と対の形で、ユーザビリティという概念が使われている。こちらは“使いやすさ”よりも“きちんと使えるか”“安全に使えるか”という面を強調するニュアンスがあり、英語表記として「useability」が使われることが多い。

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5. アクセシビリティ accessibility / 接近可能性 / 可触性 / 近接性 (http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/accessibility.html )


 コンピュータを含むさまざまな機器や建築物などが利用者にとって容易に利用可能な状態にあること。特に障害者や高齢者、非熟練者などでも利用できるか否かを表す場合に用いられる。
 accessibilityは「近づきやすさ」「アクセスのしやすさ」をいい、米国のANSI規格や建築障壁法(1961年)などでは、建築物にスロープなどを設置して車いす使用者でも到達(アクセス)できるようにするという概念として使われていた。1984年には連邦レベルの建築物設計基準として「アクセシビリティ統一連邦基準(UFAS)」が制定されている。 これらは差別禁止の面から規定されたもので、転じて建築物以外の製品・サービスでも、利用者にとっての物理的障壁をなくして、特別な努力や追加措置なしに到達・利用できるようにする考え方に対して使われるようになった。類似する概念にユーザビリティ(製品・サービス本来の用途でユーティリティを得ることができる)、バリアフリー(物的・心理的障壁をなくす)がある。
 コンピュータやソフトウェアに関するアクセシビリティのガイドラインが各種団体・民間企業などで策定されつつある。ISO(国際標準化機構)では「ISO/ TS 16071 ヒューマンシステムインタラクションの人間工学の指針」、Webページのアクセシビリティ指針としては、W3Cの「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」、米国リハビリテーション法などが知られる。
 日本では2004年6月20日に情報通信におけるアクセシビリティの規格として、「JIS X 8341:2004 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」が制定されている。なお、この規格番号には「やさしい」の意が込められているという。

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6. Microsoft Windows ユーザー エクスペリエンス FAQ 

(http://www.microsoft.com/japan/msdn/windows/windowsxp/winuifaq.aspx )

「ユーザー エクスペリエンス」とはどういう意味ですか?

ユーザー エクスペリエンスとは、ユーザーがコンピュータを使って行うすべてのタスクを含む表現です。これには、コンピュータを箱から取り出してケーブルを接続するところから、コンピュータをブートし、ハードウェアとソフトウェアをインストールして使用するところまでが含まれます。

ユーザー エクスペリエンスの多くの部分には、ユーザーがスクリーン上に見る単語、ダイアログ ボックス、アイコン、画像、およびアニメーションなどが含まれます。また、ユーザー エクスペリエンスの重要な部分には、目に見えないもの、さらには無形のものも含まれます。これには、ユーザーがプログラムのスタートアップまでに待たなくてはならない時間、コンピュータのエラーの処理方法、ユーザーが開始することなく自動的に起こるタスクなどがあります。

「ユーザー インターフェイス」という言葉と「ユーザー エクスペリエンス」という言葉を比較すればわかりやすいでしょう。ユーザー インターフェイスはタスクを実行するためにユーザーによるアクションを必要としますが、優れたユーザー エクスペリエンスはユーザー インターフェイスなしで実現することができます。